センターの概要 Center overview
若手研究者の新たな道
ポスドクという選択 @GNRC

大川 洋平 先生
2012年、昭和大学保健医療学部看護学科を卒業後、2012年から東海大学医学部付属病院の集中治療センターに勤務。2014年、東海大学大学院健康科学研究科看護学専攻クリティカルケア看護学分野にて修士(看護学)を取得し、2018年、東北大学大学院医学系研究科機能医科学講座行動医学分野にて博士(障害科学)を取得。2018年4月より現職。
PDとしてGNRCに入ろうと思った理由を教えて下さい。
東北大学の博士課程では、医学系研究科に所属していたので看護学というよりも、医学的な実験手法を用いて研究を行っていました。そのため、看護学の視点でもっと臨床現場へ還元できる研究を行い、看護の現場に役に立つ研究に取り組みたいと考えました。東京大学は、日本で看護学を学ぶことができる最高峰の大学です。著明な海外の先生方からもご指導をいただく機会があり、国内のみならず国際的な視点から看護学を探求していくことができます。このような大変素晴らしい環境の中で私自身、研究者として成長していきたいと考え、GNRCのPDを志願しました。
2018年度PDとしての目標は何でしたか?
研究者として主体的に研究活動を推進していく上で、日本学術振興会の科学研究費(科研費)を獲得することは重要な課題です。若手研究者が申請できる研究活動スタートアップ支援や若手研究に応募し、これらの競争的研究資金の獲得を目指しました。更に、研究に必要な知識をPDセミナーで学びながら、技術のトレーニングなどを定期的に実施し、研究進捗を学会や論文等で報告することを目標としました。
先生の研究を教えて下さい。
- 内容:
- 普段の日常生活の中で、消化器症状である「下痢」や「便秘」は高頻度で現れる症状の一つです。一般的な社会生活を送っている健康な人であっても、時々生じることがあります。このような排便障害の原因は多岐にわたりますが、健常者であれば事前にトイレに行ったり、医療機関に受診する等の行動により、便失禁を防いだり症状を緩和させることが可能です。しかし、認知運動機能が低下した高齢者では、自覚症状を訴えることができず、また自力での排泄が困難な場合があります。下痢による便失禁を防ぐため、事前に下痢を予測する方法を考えました。
そこで、腹部超音波画像装置(エコー)を使用して大腸を非侵襲的に撮影することで、便の有無を可視化する研究に取り組みました(図1)。社会連携講座イメージング看護学での先行研究から、エコーを使用することで正常便や硬便の可視化が報告されています。そこで、更に下痢を可視化する技術を確立させるため研究に取り組んでいます。
近年の海外の研究では、介護と仕事の間で生じる葛藤が離職意思や抑うつ、介護負担感を増強させることが報告されています。そのため、私は、介護と仕事の間で生じる葛藤(Work-care conflict)の日本語版の尺度を開発し、この葛藤を軽減できるような要因の探索をしています。職場での介護休暇等の福利厚生の充実や働き方改革の徹底も重要だと思いますが、被介護者の利用する介護保険サービスなどの地域での支援が家族介護者にどのような波及効果があるのかについて、研究を進めています。
GNRC(この一年)で学んだことを教えて下さい。
臨床現場での疑問を解決するため、看護理工学の手法を用いて現象を科学的に明らかにする方法を学びました。特に、社会連携講座イメージング看護学の講座ミーティングやリサーチフィールドにも同行し、在宅ケアでのニーズを学ぶことができました。また、PDセミナーを通して、質的研究手法によるインタビューやストーリーラインの作成など、大変貴重な学びを得ることができました。特に、看護理工学入門セミナーでは、産学連携の研究の重要性や、看護研究が秘める可能性を学ぶことができました。このGNRCで学んだ貴重な経験を今後の看護研究に活かしていけるよう努力して参ります。
これからPDを目指す若手研究者に向けてメッセージをお願いします。
大学院博士課程を修了し、研究者として自立して、主体的に研究を推進していくには知識と技術が必要になります。それ以上に努力が必要だと思っています。このGNRCのPDプログラムは、若手研究者が一人前に歩き出せるよう、きっかけを作ってくれる場所だと思います。国内のみならず、海外の先生方との交流もたくさんあり、これは東京大学のGNRCでしか経験できないことだと思っています。このような大変貴重な経験しながら、研究者として一人前に成長できるよう私自身、努力を続けていきたいと思っています。
主な業績
Yohei Okawa, Shin Fukudo, Hiromi Sanada. Specific Foods Can Reduce Symptoms of Irritable Bowel Syndrome and Functional Constipation: A Review. BioPsychoSocial Medicine 2019. In Submit.
※掲載内容は、2019年2月当時のものです。

