センターの概要 Center overview
若手研究者の新たな道
ポスドクという選択 @GNRC

目 麻里子 先生
2010年、茨城県立医療大学看護学科を卒業後、2010年-2012年慶応義塾大学病院に勤務。2014年、東京大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻家族看護学分野修士課程を修了し、2017年同分野で博士号(保健学)を取得。2017年4月より現職。
PDとしてGNRCに入ろうと思った理由を教えて下さい。
博士課程を修了し、研究の楽しみが湧いてきた中で、教員として働くにはまだ実力が足りず、研究を続けるためにはどうすればよいか考えていたところ、上別府先生にご紹介いただきました。研究に専念できるだけでなく、海外の方との交流など、グローバルな活動もできる点に興味を持ち、GNRCに入ろうと思いました。
2017年度PDとしての目標は何でしたか?
まずは、研究を続けたいという思いが強かったので、科研費を獲得し、研究を行う事でした。あとは、グローバルナーシングリサーチセンターということで、英語論文の投稿を行うことや国際学会で発表など、グローバルな取り組みを積極的に行うことを目標としていました。
先生の研究を教えて下さい。
テーマ「家族介護者のワーク・ライフ・バランス支援」
- 内容:
- 現在、日本では介護による離職が社会問題となっています。親の介護を必要とする世代は管理職など会社内で重要なポジションについている方が多くいます。介護に専念することを望んでいる場合は良いと思うのですが、問題は、介護のために、これまで築き上げてきたキャリアをご本人の望まない形での中断を余儀なくされている状況が生じているということです。介護にはいつか終わりが来ます。しかし、介護者の生活はその後も残っているのです。そのため、離職をせず、介護と仕事をうまくやりくりするには、どのような支援が必要かについて関心があり、研究を進めています。さらに、介護者のみでなく、介護者とその親の双方が満足できる介護を行うには、どのような支援が必要かについて研究しています。
近年の海外の研究では、介護と仕事の間で生じる葛藤が離職意思や抑うつ、介護負担感を増強させることが報告されています。そのため、私は、介護と仕事の間で生じる葛藤(Work-care conflict)の日本語版の尺度を開発し、この葛藤を軽減できるような要因の探索をしています。職場での介護休暇等の福利厚生の充実や働き方改革の徹底も重要だと思いますが、被介護者の利用する介護保険サービスなどの地域での支援が家族介護者にどのような波及効果があるのかについて、研究を進めています。
GNRC(この一年)で学んだことを教えて下さい。
今まで自分が関わったことのない研究手法について、セミナーを通して多く学ぶことができました。例えば、質的研究セミナーで、ストーリーラインの作り方や、研究者間での吟味の大切さなど、短い時間でしたが実際にインタビューし、ストーリーラインを作ることで気づくことも多く、理解を深めることができました。また、看護理工学セミナーでは、枠組みに沿って研究を行う事の大切さや、工学の分野など、多分野融合の研究を行うことで、看護研究の幅の広がりを学びました。この看護理工学セミナーで、特に関心を持ったエコーについては、ハンズオンセミナーにも参加させて頂き、イメージング技術を利用した新しいシステムを利用することでどのように看護実践へ応用できるかについて考える機会を頂きました。
これからPDを目指す若手研究者に向けてメッセージをお願いします。
1年間振り返ってみると、PDの期間はとても有意義なものでした。特に、海外の先生方との交流をたくさん行えたことは、GNRCにいたからこそだと思っています。先生方は皆さんとても親身になってくださり、とても温かい環境です。看護の枠に留まらず、様々な分野の研究者の方と研究をしたいという思いがあれば、ぜひGNRCへ入ることをお勧めします!
目先生の代表論文(英・和)1篇
Sakka M, Sato I, Ikeda M, Hashizume H, Uemori M, Kamibeppu K. Family-to-work spillover and appraisals of caregiving by employed women caring for their elderly parents in Japan. Industrial Health. 2016; 54(3): 272-281.
目麻里子, 上別府圭子. 働く女性のメンタルヘルスと家族看護学. 産業精神保健. 2015 Jun; 23(特別号):128-131.
目麻里子, 上別府圭子. 働く女性のメンタルヘルスと家族看護学. 産業精神保健. 2015 Jun; 23(特別号):128-131.
※掲載内容は、2018年2月当時のものです。

