センターの概要 Center overview
若手研究者の新たな道
〜 ポスドクという選択 @GNRC 〜

浦井 珠恵 先生
2009年金沢大学医学部保健学科看護学専攻を卒業後、金沢大学大学院医学系研究科保健学科看護科学領域(博士前期課程)に進学し、2011年修了。2011―2014年金沢大学附属病院に勤務。2014年金沢大学大学院医薬保健学総合研究科保健学専攻看護科学領域(博士後期課程)に進学し、2017年博士号(保健学)を取得。2017年金沢大学新学術創成研究機構(博士研究員)、2018年4月、GNRC特任研究員として採用。
PDとしてGNRCに入ろうと思った理由を教えて下さい。
学部の卒業研究・博士前期課程・博士後期課程では、マウスを用いた皮膚創傷治癒過程に関する基礎研究に取り組みました。明らかにしたい現象を再現できず、疾患モデル確立の困難さを経験しました。また、博士前期課程修了後に臨床看護師として勤務した際には、術後のボディイメージの変化に関するテーマで、インタビューを用いた質的記述的研究に取り組みました。病棟の先輩方と一緒に、教科書を用いて懸命に独学で取り組みましたが、研究発表会の講評では分析ならびに考察が適切ではないとの指摘を受け、悔しい思いをしました。
博士研究員として臨床研究に取り組んだ際にも、書籍のみの知識で超音波診断画像を解釈することの難しさを感じ、GNRCの学外看護学系若手研究者コンサルテーションを受けました。GNRCでは各分野のエキスパートの先生方が在籍されており、異分野融合型の研究環境であることに大変驚いたことを今でも覚えています。これまで研究で感じてきた悔しさや困難感を払拭する、研究遂行能力を身につけたいとの思いがあり、GNRCのPDに応募しました。
2018年度PDとしての目標は何でしたか?
・研究遂行能力の向上:体系的な思考プロセスを学び、実践することを目指しました。また、研究費の獲得ならびに英語論文の投稿も目標に掲げました。
・国際共同研究や産学連携のプロジェクトへの参加:国際的な視点を持ち、異分野融合研究に携わることで多職種との協働について学ぶことを目指しました。
・PDセミナーの単位取得:多彩なPDセミナーへ出席し、質的研究や看護理工学分野のメソドロジーを学ぶことを目指しました。
・国際共同研究や産学連携のプロジェクトへの参加:国際的な視点を持ち、異分野融合研究に携わることで多職種との協働について学ぶことを目指しました。
・PDセミナーの単位取得:多彩なPDセミナーへ出席し、質的研究や看護理工学分野のメソドロジーを学ぶことを目指しました。
先生の研究を教えて下さい。
テーマ「褥瘡の創閉鎖部への再発予防を目的とした瘢痕組織の脆弱性の検討」
- 内容:
- 褥瘡の再発は患者の身体的苦痛や活動制限の原因となり、退院の延期にも繋がるため、臨床では再発予防ケアが重要となります。しかし、創閉鎖に至った褥瘡の36.8%が再発していたことが予備調査でわかり、再発予防ケアに対するニーズが高まっています。
臨床では、褥瘡のアセスメント指標であるDESIGN-Rが0点になった時点、つまり、上皮化が完了し、滲出液が消失した時点で褥瘡が治癒したと判断しています。しかし創傷治癒過程では、上皮化完了後に再構築期が始まり、1年ほどかけて瘢痕組織は成熟すると言われています。これより、褥瘡の創閉鎖部における再発には、瘢痕組織の成熟が関与しているのではないかと疑問をもちました。
本研究で瘢痕組織の成熟過程がびらん形成に関与することが分かれば、褥瘡再発のハイリスク期間を個別に評価することが可能となります。すると、再発予防ケアが特に必要な患者に優先的に介入することができ、最終的には、再発の軽減に繋がると考えています。
現在は、第一段階として瘢痕モデルの開発に取り組んでいます。新たなアセスメントツールを臨床に還元できる日を目指し、実験を進めています。
GNRC(この一年)で学んだことを教えて下さい。
・看護トランスレーショナルリサーチを遂行する上で体系的に研究計画を立案し、実験を進めることを学びました。上記4)でも述べたように、臨床から疑問を拾い上げ、研究室でメカニズムを解明し、臨床で適合性を評価した上で、臨床での疑問を解決できたかを評価し、それによって見出された次の疑問へと繋げていく円環的取り組みにチャレンジする機会をいただけたことは大変貴重な経験です。患者第一の、臨床に根差した看護研究を遂行するため、看護トランスレーショナルリサーチの考え方をベースに研究を続けていきたいと強く思います。・国際共同研究ならびに産学連携のプロジェクトの双方に参加する機会をいただきました。国は違っても、看護や臨床現場をより良くしたいとの思いは同じであり、同じゴールを見据えて協働できる喜びを感じました。海外の研究者とコミュニケーションをとる上で英語は必須となるため、英語力向上に努める上でのモチベーションになっています。産学連携では企業と協働する上での役割分担・調整について学びました。プロジェクトチームの中での役割を意識した行動や、看護研究者としての臨床調査に対する姿勢や配慮を学びました。
・質的研究法のセミナーでは、リサーチクエッションの立案から分析に至るまでの一連の過程をグループワークで演習しました。コード化・カテゴリー化の進め方を先生から直接ご指導いただけたことは、かけがえのない財産になりました。これまで、質的研究と量的研究を考える際、双方の違いばかりが目につきがちでしたが、「文献レビューの重要性」や「常にリサーチクエッションを念頭に置いて研究を遂行すること」など、共通点も多いことを学びました。質的研究か、量的研究かというような研究手法で研究テーマを限定してしまうのではなく、Clinical Question、Research Questionが先にあり、その疑問を解明するために最適な研究手法を選んで実施できるようになるため、今後も研究方法に関する自己学習は継続したいと考えています。
これからPDを目指す若手研究者に向けてメッセージをお願いします。
GNRCのPDプログラムでは、量的研究から質的研究まで幅広い研究手法を学ぶことができます。若手研究者にとって、研究遂行能力ならびに国際的な視点を身につけることができる環境は大変貴重です。患者第一の、臨床に根差した看護研究を学びたい方は、是非GNRCのPDプログラムにご応募ください!
浦井先生の主な業績
Urai T, Nakajima Y, Mukai K, Asano K, Okuwa M, Sugama J, Nakatani T. Does Obesity without Hyperglycemia Delay Wound Healing in an Obese Mouse Model Induced by a High-Fat Diet? Health, 9: 1660-1679, 2017
※掲載内容は、2019年3月当時のものです。

