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若手研究者の新たな道

外部の大学教員が研究力と研究マインドを磨く @GNRC

臺 美佐子 先生

臺 美佐子 先生

金沢大学医薬保健研究域保健学系看護科学領域臨床実践看護学講座 助教
2005年群馬大医学部看護学専攻卒業後、2005-2008年慶應義塾大学病院脳神経外科勤務。
2014年金沢大学大学院医学系研究科保健学系博士後期課程修了し博士(保健学)取得。
2010年より金沢大学にて助教を務め、看護教育では成人看護学(急性・周手術期)、研究ではリンパ浮腫を専門とする。

学外の大学教員としてGNRCと共同研究構築に至ったきっかけ

 この度、GNRCのケアイノベーション創生部門(バイオロジカルナーシング分野)の先生方と共同研究をスタートいたしました。東京大学に所属しない他大学の大学教員が、このような共同研究構築に至ったきっかけは、GNRCの目的の一つに〝東京大学以外の若手研究者を育てる″ということが挙げられていることを知ったことです。私自身、大学教員として教育、学内用務、様々な社会活動(学会事務局等)を務める中で、質の高い研究を遂行するためにどのように進めていけば良いのだろうかと模索しておりました。
 そこで、職場の上司にも相談をしたうえで、研究力を向上させるためにGNRCの研修を受けることにし、1年間、定期的に1週間程度ずつGNRCで研修させていただくことにいたしました。現在、1回目の研修が終了したところですが、研究時間の確保、研究相談、技術の演習をさせていただくことができ、長年温めていた研究テーマを具体化させスタートすることができました。

大学教員として、若手研究者としての夢

〜看護学専攻学生に世界に通じる研究マインドを育てたい〜
〜リンパ浮腫患者さんの役に立つ研究をしたい〜
 私は看護学専攻の学生達に、成人看護学(急性・周手術期)の教育をしており、学生達には将来、看護界のリーダーとして活躍できる人材に成長してほしいと願っています。私は教育者として、学生ひとりひとりが〝磨けば光るダイヤモンドの原石″だと信じ育てたいとポリシーを抱いており、今の学生たちに必要なことは、研究能力の向上と研究マインドを持つことだと思っています。彼らは素直で従順な学生達ですが、″本当にこれで良いのだろうか?″と疑問に思い、その疑問を突きつめるような、強さが不足しています。今ある看護技術、ケア方法、評価方法、管理といった看護を取り巻く多くのことに対してクリティークし、〝患者さんのために、どうやったらもっと改善できるか”を考え、実現させる力を身に着けてほしいと考えます。このような研究マインドを持った学生たちを育てるには、大学教員である私自身も研究能力と研究マインドを向上させる努力を続けることが必要であると感じます。そして、研究者として、専門家としてかかわっているリンパ浮腫患者さんにとって安心・安全な社会を構築できるように、少しでもその役に立つ研究をしたいと思っています。
 さらに、教育者として、また研究者として、今の私に必要なことは「世界に通じる」研究能力と研究マインドの向上であると実感しています。グローバルなレベルでの私自身の成長が、すなわち、看護学専攻の学生達とリンパ浮腫患者さんへの貢献に繋がると信じています。

先生のこれまでの研究の取り組みを教えて下さい。

 リンパ浮腫を専門として研究を継続してきました。リンパ浮腫の病態は、リンパ循環停滞による真皮・皮下組織へのリンパを含む組織間液貯留であり、患肢の慢性浮腫が生じます。最大の課題はこの病態的特徴による、細菌性皮膚急性炎症である蜂窩織炎の合併です (図1)。蜂窩織炎予防のためには、浮腫管理を継続し浮腫悪化を防ぐ必要があります。このために、主に、がん術後のリンパ浮腫患者に対する新しいケアの有効性検証や、超音波画像装置(エコー)を用いた新評価方法の確立のための研究を実施してきました。
 新しいケアの有効性検証では、乳癌術後の上肢リンパ浮腫患者に対する準実験研究を行い、1日2回、振動器を用いた加振を標準ケアに加えることで浮腫減少率が高まることを示しました。また、現在、患者らのニーズの高い夏用弾性ストッキング開発に産学連携で着手し、特許出願中です。この新製品は、2018年度内に全国へご紹介出来る予定です。
 エコーを用いた新評価方法の確立では、標準的ケアのひとつである徒手的リンパドレナージ直後の効果を可視化できることを報告しました。ドレナージ後には、真皮では周波数20MHzのエコーにより低輝度所見割合が減少、皮下組織では周波数10MHzのエコーにより不均一割合が減少することを見出しました(図2)。これまで主観的評価に留まっていたリンパ浮腫ケアの効果を、超音波画像を用いることで定量的に評価でき、患者のモチベーション向上が期待できるようになりました。また、ケース・コントロールスタディにより、蜂窩織炎罹患歴のある患者らの真皮の特徴として、高輝度所見割合が高いことを明らかとしました。この高輝度の物質が何かは明確ではないものの、蜂窩織炎罹患歴のある者は、罹患歴のない者に比較して明らかに真皮構造が異なることを示しています。
 これらの研究を踏まえ、現在はリンパ浮腫患者が合併する蜂窩織炎の真皮・皮下組織にフォーカスを当て、その構造や皮膚の局所免疫機能の特徴をバイオロジーの手法を取り入れて明らかにすることにチャレンジしています。
図1
図2

GNRCとの出会いは、大学教員としての研究ライフにどのような変化をもたらしましたか。

 最も大きいことは、素晴らしい研究者たちとの出会いによって研究マインドが磨かれることであると感じます。GNRCの研究者たちは、世界レベルの研究を行ってきている研究のプロフェッショナルであり、それを教育することにも優れています。私は、今回の研修で、GNRCの研究者たちが〝研究は互いに協力し合い、良いものを創り上げていく。その努力は惜しまない″という素晴らしいマインドを持っていらっしゃることを知りました。このような方々と共に、研究を行う機会を持つことが自身の成長に大きく影響すると思います。
 研究者は自立が大切と言われますが、自律の精神も大切であろうと思います。実際は、自分一人ではなかなか研究を進めることができないことが現状です。私自身も、「こんなことをしてみたいけれど、実際にどのようにスタートさせればよいのだろう..」と長年思っていました。しかし、今回の研修で、複数名で話をしながら研究を具現化していくことができたことは、この研究マインドによるものだと思います。研究を遂行させることを第一目標として、この部分はどうしたらよいか、などプロフェッショナルの手を借りることが出来るようになったことが、自身の大きな進歩であると思います。

外部の大学教員の若手研究者に向けてメッセージをお願いします。

 研究って、いつ、どのように、どこからしたらいいのだろう、と困っていらっしゃいませんか。また、博士号取得後に研究力向上をしたいと思いながら、日常の多くの用務を優先させて後回しになっていらっしゃいませんか。
 私は、各々の研究力と研究マインドを磨くことが、すなわち学部や大学院教育、研究の向上に繋がると信じています。研究を遂行させたいとき、ご自身の今考えている研究の内容、疑問に思っていること、悩んでいることを相談することから始めてみてはいかがでしょうか。おそらく、新たな気づきやこれからの具体的な計画を立案するきっかけになると思います。

臺美佐子先生の代表論文1篇

Dai M, Sato A, Maeba H, Iuchi T, Matsumoto M, Okuwa M, Nakatani T, Sanada H, Sugama J Dermal Structure in Lymphedema Patients with History of Acute Dermatolymphangioadenitis Evaluated by Histogram Analysis of Ultrasonography Findings: A Case-Control Study. Lymphatic research and biology, 14(1):2-7, 2016.

※掲載内容は、2018年2月当時のものです。